アベノミクスは失敗?
アベノミクスは旧三本の矢「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」を柱とする政策でした。
正直なところ、一般市民としてはその恩恵をあまり感じていません。アベノミクスは失敗だったのでしょうか。今回は、安倍政権のこれまでに行ってきた政策について調べてみました。
金融緩和
「大胆な金融政策」として金融緩和を行い、デフレの脱却を目指して来ました。内閣府のデータによると2014年~2015年の初めごろまでは順調に消費者物価指数が上昇しています(前年同月比)。
しかし、2015年の中頃からは伸び悩み、0%付近を前後している状況です。
リンク先の遅行指数から消費者物価指数のデータが見れます。
そもそも、なぜインフレにしなくてはいけないのでしょうか。物価が低くなっていくと今お金を使うより貯蓄しておいて後々使う方が実質的に得になり、消費を低迷させる原因になるからです。
インフレになれば、お金を貯めておくよりも、株や不動産に投資した方が儲かりますから、お金が市場に回りますね。
今の所、物価は伸び悩んでいる状態です。
株価上昇
金融緩和の効果は全くなかったわけではありません。株価は大きく上昇しています。
日経平均の2012年大納会の終値は1万0395円でしたが、2015年の終値は1万9033円です。年末の終値が1万9000台に乗るのは1996年以来19年ぶりの高値です。
これほど株価が上昇したことに関してはアベノミクスを評価しても良いのではないでしょうか。
すいません、この記事書いてたのが正月だったんですが、今は急落して1万7000円台まで下がってます。
雇用環境の改善
もう一つ改善した点としては、完全失業率の低下と有効求人倍率の上昇があげられます。
2009年のピーク時は5.5%あった完全失業率は、2015年11月時点で3.3%まで低下しています。有効求人倍率に関しても、2009年の最低値は0.42倍でしたが、2015年11月時点で1.25倍まで上昇しています。
企業の人手不足が顕著になり、求職者も職に就きやすくなっています。これは株価上昇だけでなく、労働人口の減少の影響も大いにありそうですが。
ただ、問題として残っているのは非正規社員数の高止まりです。
2015年11月に厚生労働省が発表した統計によると、2014年度にはなんと約4割が非正規者として働いています。これは異常な事態と言えるでしょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001064175&cycode=0
出典(「統計情報」厚生労働省)2015年11月データ
非正規社員はいつクビを切られるかわからない、不安定な状態ですね。完全失業率や有効求人倍率などの数字で見える部分は改善されていますが、非正規社員が増えていることを考えると、雇用環境の質の部分は改善されていないようです。
消費税増税という愚策
私の意見としては、消費税の増税は間違いです。昨今では、日本でも賃金格差が拡大するばかりで、低所得者層の生活は一層苦しくなっています。
消費税というのは、所得が低い方が税負担の割合が高くなる逆進課税です。低所得者は収入に対して貯蓄に回せる金額が少ないので、収入のほとんどを消費に回すからです。
http://www.stat.go.jp/data/kakei/2014np/gaikyo/pdf/gk02.pdf
出典(「家計調査結果」総務省統計局)2014年のデータ
上のリンク先のPDFデータから引用すると、年間収入436万円以下の階級での平均消費性向(全所得に対して消費に使われた割合)は86.3%、436~567万円では78.2%、567~709万円では75.3%と、やはり所得が低いと消費の割合が高くなる傾向が見られます。
消費税は低所得者の負担が大きくなる税金なのです。格差が拡大する中、消費増税は間違いなのは明確です。2017年には10%になりますので、低所得層の生活がさらに苦しくなるでしょう。
企業優遇
確かに雇用環境の改善はありましたが、非正規社員の増加と株価上昇、どうしても大企業(特に輸出企業)有利になっているとしか思えません。非正規社員でコストを抑えて株価も上がって、それに加えて円安ですし。
消費税を増税する一方で、今後は段階的に法人税を引き下げていく予定です。国際競争力を高めるためには法人税を引き下げるという理屈は分かります。しかし、企業の国際競争力のために国民の負担を増やすことが本当に正しいのでしょうか。
成功なのか、失敗なのか
金融緩和で株価が上がったという点、完全失業率や有効求人倍率が改善した点は評価できますが、非正規社員数の高止まりや消費税増税による低所得者の負担増を考慮すると今の所成功とは言い難いですね。
今後の政策・課題
新三本の矢
安倍政権が新たに掲げた新3本の矢は「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」。
今までも同じこと言ってて、一向に実現できてないんですよね。特に、子育て支援に関して何もできてないじゃないですか。
賃金は上昇していく予定
ここまでは、どちらかと言うと批判的に書いてきましたが、今後数年で最低賃金を1000円に引き上げる方針は評価できるでしょう。
ただ、それと同時に非正規社員を減らし、正規社員の比率を高める方向に舵を切ってほしいものです。「希望を生み出す強い経済」をスローガンに掲げてますが、安定した仕事に就けないなら、いくら経済が強くても希望が持てないですし。
低所得高齢者に給付金って…
昨年12月18日、低所得の年金受給者に対して、3万円の給付金を支給する法案を閣議決定しました。これは明らかに今年の参議院選挙に向けた票稼ぎに違いありません。
若者の所得格差が叫ばれている今、高齢者にカネを配って買収するとは酷いものです。
消費税軽減税率
食料品全般(酒・外食除く)等にかかる消費税を、8%に据え置くそうです。そして、それに加えてなぜか新聞も…。
まあ、軽減税率があると助かるとは思いますが、消費税10%がそもそもおかしいのですがね。
大学の授業料無償化してくれ
子育てをしていく中で、一番心配なのが大学進学にかかる費用ではないでしょうか。うちの親も大変苦労したと思います。
お金がなくて大学進学を諦める選択を余儀なくされる家庭もあるのではないでしょうか。
奨学金という制度がありますが、大学を卒業した段階で多額の借金を背負ってしまうのはあまりに酷です。社会人スタート時に既に差がついてしまうのです。
少子化対策のためにも、大学の授業料を免除し子育ての負担を軽くする必要があります。せめて段階的に授業料の負担を減らしていって欲しいです。
まとめ
消費税増税で増えるはずの税収が、法人税減税で消えてしまうのは腑に落ちないんですよね。そもそも、国内の消費が減ると消費税の増税って意味ないですよね?国際競争力が上がれば企業が儲かって国内の消費って増えるんですか?
企業を強くするのは優秀な人材なはずなのに、お金がなくて学びたくても学べない、子供が欲しくても子育てができない。結婚すらできない。人口が減っていく。それで企業は強くなるんですか?
非正規社員、ブラック企業、所得格差、これらの問題に対して解決策を見出さないと、経済発展や少子化の改善は難しいのではないでしょうか。